TOEIC900でも英語の会議で話せない理由|足りないのは語彙ではなく「型」
TOEICで900点を取っている人が、英語の会議で一言も発言できないまま終わる。珍しい話ではありません。むしろ、ビジネスの現場ではよく見かける光景です。
本人は「まだ語彙が足りない」「リスニングが弱い」と考えがちですが、多くの場合そこが原因ではありません。900点取れているなら、語彙もリスニングも一定の水準にあります。それでも話せないのは、テストで測っている能力と、会議で必要な能力がずれているからです。
この記事では、そのずれがどこにあるのかを分解します。
読む力と話す力は別物
TOEICのリーディングとリスニングは、与えられた英語を理解する力を測ります。選択肢を選ぶ形式なので、自分で英語を組み立てる必要がありません。
一方、会議で発言するには次の3つを同時にやる必要があります。
- 相手の発言をリアルタイムで理解する
- 自分の主張を組み立てる
- それを英語の文として口から出す
TOEICが鍛えるのは1だけです。2と3は別の訓練が必要で、スコアが上がっても自動的には身につきません。
さらに厄介なのは、会議には制限時間があることです。読むときは戻って読み返せますし、書くときは推敲できます。話すときは、考えながら同時に出力しなければならない。この「同時処理」の負荷が、実力を大きく削ります。
会議で詰まる3つの場面
具体的に、どこで詰まるのか。私が英語の打ち合わせで苦労したのは、次の3つでした。
1. 割り込むタイミングがわからない
日本語の会議なら「すみません、一点だけ」と自然に入れるのに、英語だと切り出せない。議論が進んでいき、発言しないまま終わる。
これは英語力の問題というより、割り込むためのフレーズを持っていないだけです。
2. 質問の意図がつかめない
単語は全部聞き取れた。文の意味もわかった。それでも「何を答えればいいのか」がわからない。
英語の会議では、質問が遠回しに来ることがあります。「Have you considered…?」は純粋な質問ではなく、「そこは考慮すべきだ」という指摘であることが多い。表面の意味だけ追っていると、噛み合わない返答をしてしまいます。
ここで一番危ないのは、わからないまま流してしまうことです。
聞き返すのは気まずい。相手の時間を奪う気がするし、英語力を疑われる気もする。だから「たぶんこういうことだろう」と推測で答えてしまう。私自身、これを何度もやりました。
ただ、仕事の場面では、この気まずさを避けたコストのほうがはるかに高くつきます。指摘だったものを質問だと受け取って的外れな返答をすれば、相手は「伝わらなかった」と判断します。認識がずれたまま議事録が残り、あとから「そこは合意したはずだ」という話になる。英文契約の交渉なら、条件の理解がずれたまま進むこともあり得ます。
その場で30秒確認するコストと、認識がずれたまま数週間進むコストを比べてください。 比較にならないはずです。
そして、確認は英語力の低さの証明ではありません。日本語の会議でも、優秀な人ほど「それは◯◯という理解で合っていますか」と確認します。英語だとこれを言えなくなるのは、英語力の問題ではなく、気後れの問題です。
聞き返すときに便利なのは、丸ごと聞き直すのではなく、自分の理解を言葉にして当てにいく形です。
- Just to clarify, do you mean we should revisit the timeline?
- So, if I understand correctly, you’re saying the risk is on our side.
これなら相手は「そうだ」か「いや、そうではなく」と答えるだけで済みます。丸投げの “Sorry?” より、相手の負担も小さい。
わからないまま頷くのが一番危険で、その場で確認するのが一番安全です。
3. 答えの骨組みが作れない
言いたいことはある。でも、どこから話せばいいかわからず、単語が散らばったまま終わる。
日本語だと「まず結論を言って、理由を2つ挙げて」という構成が無意識にできています。英語では、その構成を作る余力が残っていません。理解と出力で認知資源を使い切っているからです。
解決策は「型を先に用意する」
3つとも、共通する対処法があります。毎回ゼロから英語を組み立てるのをやめて、あらかじめ型を持っておくことです。
会議で使う表現の多くは定型です。割り込む、確認する、保留する、反対する。場面はある程度決まっていて、そのたびに新しい英語を発明する必要はありません。
割り込むときの型
- Can I jump in here?
- Just one point on that.
- Sorry, can I add something?
どれも短く、覚えるのは一度きりです。これを口が勝手に動くレベルまで持っていけば、「入りたいけど入れない」がなくなります。
確認するときの型
- Could you elaborate on that?
- Sorry, I didn’t catch the last part.
聞き取れなかったのか、意味がつかめなかったのかで使い分けます。前者は素直に聞き直し、後者は前の章のように自分の理解を当てにいくほうが早く片付きます。
答えるときの型
結論、理由、補足の順で固定します。
- There are two reasons. First,… Second,…
- The short answer is yes, but with one condition.
この型を先に口に出してしまえば、あとは埋めるだけになります。話しながら構成を考える負荷が消えるので、内容に集中できます。
時間を稼ぐ型
すぐに答えが出ないとき、沈黙するのが一番きつい。
- That’s a good question. Let me think for a second.
- Can I come back to that later?
これらは「逃げ」ではなく、ネイティブも普通に使う表現です。
練習の順番
型を覚えるだけでは口から出ません。次の順で進めるのが現実的です。
- 自分の会議で頻出する場面を3つ書き出す(報告する、質問に答える、反対する、など)
- 各場面につき、型を2つずつ選ぶ。多すぎると使えません
- 声に出して練習する。黙読では口が動くようになりません
- 次の会議で1つだけ使う。全部やろうとすると失敗します
重要なのは、範囲を絞ることです。ビジネス英語の教材を最初から読み通しても、自分が使わない場面が大半を占めます。それより、実際に困った場面に対応する型を10個持つほうが、はるかに効きます。
英語力そのものを上げる必要はあるか
あります。ただし優先順位の問題です。
型でカバーできるのは、会議の進行に関わる部分です。議論の中身、たとえば自社の立場を説明したり、相手の提案の問題点を指摘したりする部分は、最終的には自分の言葉で話す必要があります。
その段階まで来たら、発話量を増やす訓練に投資する価値があります。英語コーチングやオンライン英会話が効くのはここです。独学で語彙を増やすのと違い、口から出す回数を確保できるからです。
逆に言えば、型で済む段階でスクールに大金を払う必要はありません。まず型で会議に参加できる状態を作り、それでも足りない部分がはっきりしてから投資するほうが、お金も時間も無駄になりません。
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まとめ
- TOEICが測るのは理解する力で、話す力は別の能力
- 会議で詰まるのは、割り込む・意図をつかむ・骨組みを作るの3か所
- わかった気で進めるのが最も危険。その場で確認するコストは安い
- 対処法は、毎回英語を組み立てずに型を用意しておくこと
- 型は自分が実際に困る場面に絞って10個程度でいい
- 型で足りなくなってから、発話量を増やす訓練に投資する
英語力が足りないから話せないのではなく、話す準備をしていないから話せない。この順番を逆に理解していると、いつまでも「もっと勉強してから」で終わります。
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