イギリス英語とアメリカ英語の違い|日本人学習者がどちらを選ぶべきか
イギリス英語とアメリカ英語の違いは、よく話題になるわりに、実務で困る場面は限られています。
「エレベーターは lift か elevator か」といった語彙の差は覚えれば済みます。実際に問題になるのは、そこではありません。
私は幼少期をイギリスで過ごし、帰国後は日本の環境で英語を続けてきました。その経験から、どの差が本当に効いて、どの差は気にしなくていいのかを整理します。
結論:学習者が気にすべきは2つだけ
先に結論を書きます。
- 気にすべき:リスニングで聞き取れるかどうか、ビジネス文書での綴りの統一
- 気にしなくていい:語彙の細かい差、自分がどちらの発音で話すか
理由は単純で、自分の英語がどちらに寄っていても、相手はまず理解してくれるからです。困るのは、相手の英語を聞き取れないときと、書いたものに一貫性がないときだけです。
1. 発音:聞き取りでは差が出る
自分が話す分にはどちらでも通じますが、聞く側に回ると差が出ます。
代表的な違いは3つです。
r の有無
アメリカ英語では car、park の r をはっきり発音します。イギリス英語(標準的な発音)では、母音の後の r をほとんど発音しません。
その結果、car は「カー」に近くなり、慣れていないと別の単語に聞こえます。
t の扱い
アメリカ英語では、water、better のような語の t が d に近い音になります。「ウォーラー」「ベラー」に近い響きです。
イギリス英語では t をはっきり発音するか、地域によっては飲み込みます。
母音の違い
can’t、bath、dance などの a の音が異なります。アメリカ英語では「キャント」に近く、イギリス英語では「カーント」に近い。
日本の英語教材はアメリカ英語が中心なので、イギリス英語のリスニングでつまずく人が多いのはこの差によるものです。
対策は単純で、両方に耳を慣らしておくことです。BBCとCNNを交互に聞く程度で構いません。どちらか片方しか聞いていないと、もう片方で急に理解度が落ちます。
2. 語彙:覚えるより、文脈で拾う
語彙の差はよく紹介されますが、実務で致命的になることはまれです。
| 意味 | イギリス | アメリカ |
|---|---|---|
| エレベーター | lift | elevator |
| アパート | flat | apartment |
| 休暇 | holiday | vacation |
| 地下鉄 | underground / tube | subway |
| ズボン | trousers | pants |
| 携帯電話 | mobile | cell phone |
覚えようとすると際限がないので、出てきたときに拾うくらいで十分です。相手も、こちらが外国人だとわかっていれば文脈で補ってくれます。
ただし1つだけ注意が必要なものがあります。pants です。イギリスでは下着を指すため、ズボンの意味で使うと誤解されます。この手の「意味が変わる語」だけは知っておいて損がありません。
3. 綴り:ビジネス文書では統一が必要
ここは実務で効きます。
| イギリス | アメリカ |
|---|---|
| organisation | organization |
| centre | center |
| colour | color |
| licence(名詞) | license |
| travelling | traveling |
| programme | program |
問題は、どちらを使うかではなく、1つの文書の中で混ざることです。
契約書や提案書で organisation と organization が混在していると、雑な印象を与えます。校正を受けていない文書に見えるからです。
対策は3つです。
- 相手の国に合わせる。イギリスの会社が相手なら British English
- 自社の既存文書に合わせる。過去の文書とそろえるのが無難
- Wordやエディタの言語設定を固定する。手動でやると必ず混ざります
3つ目が実務的には一番効きます。設定を English (UK) か English (US) のどちらかに固定しておけば、チェック機能が拾ってくれます。
4. 文法:差は小さい
文法上の差は、実務で問題になるほどではありません。代表的なものを挙げておきます。
- 完了形の使い方:イギリスでは I’ve just eaten、アメリカでは I just ate も一般的
- 集合名詞の扱い:イギリスでは The team are、アメリカでは The team is
- 前置詞:at the weekend(英)と on the weekend(米)
どちらを使っても誤りとされることはほぼありません。試験で問われることもありますが、実務上の影響は小さい。
学習者はどちらを選ぶべきか
よく聞かれる質問ですが、目的から逆算すれば答えは出ます。
アメリカ英語を選ぶ場合
- 日本の教材・試験の大半がアメリカ英語ベース
- 取引先がアメリカ企業
- TOEICの対策を優先する(ただしTOEICは複数の発音が混ざります)
イギリス英語を選ぶ場合
- イギリス・ヨーロッパへの留学や赴任が視野にある
- IELTSを受ける予定がある
- 取引先がイギリス・オセアニア系
どちらでもいい場合
上記に当てはまらないなら、教材の入手しやすさで決めて構いません。日本ではアメリカ英語の教材が多いので、自然とそちらになります。
重要なのは、選んだほうを軸にしつつ、もう片方も聞けるようにしておくことです。話す側は一貫していれば問題ありませんが、聞く側は相手を選べません。
帰国後に気づいたこと
私自身、帰国してから気づいたのは、日本の英語教育がアメリカ英語に寄っていることでした。
リスニング教材の発音、教科書の綴り、単語帳の語彙。どれもアメリカ英語が前提になっています。イギリスで耳に入っていた英語とは、細部が違う。
ただ、これは不利ではありませんでした。両方に触れた経験があると、初めて聞く発音でも「別の話し方をしているだけ」と処理できるからです。混乱するのは、片方しか知らない状態で、もう片方に出会ったときです。
学習者に勧めたいのも同じことです。軸はどちらかに置きつつ、もう片方の音にも定期的に触れておく。それだけで、リスニングの安定度が変わります。
まとめ
- 発音の差は、話す側より聞く側で効く。両方に耳を慣らしておく
- 語彙の差は文脈で拾えば十分。ただし pants のような誤解を生む語は例外
- 綴りは、どちらを使うかより1文書内で統一することが重要
- 文法の差は実務上ほぼ問題にならない
- 選ぶ基準は目的。決まらないなら教材の入手しやすさで構わない
イギリス留学やIELTSを検討している場合は、イギリス英語に寄せた教材を選ぶ意味があります。そのあたりは、このカテゴリで順に扱っていきます。
イギリス英語を選んだ場合に、何から真似すればいいか、どこで話す練習をすればいいかは、イギリス英語を身につけるには|まず発音からで書いています。
どちらの英語に触れるにしても、聞く量と話す量を確保する必要があります。費用を抑えて場数を踏む方法は、LanCulの記事で整理しています。